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生産管理や生産計画でAIを活用するには?活用範囲やメリット、導入事例を解説

生産管理においてAIを活用

近年注目されているDXの中でも、AIの活用は非常に期待値が高く、企業の競争力を向上させる可能性のある施策です。しかし、製造業においては、AIを積極的に活用している企業は多くありません。

その理由として、「どのような業務に活用できるか分からない」「導入しても本当にメリットがあるのか分からない」といった疑問があるからではないでしょうか。

生産管理の分野においては、近年の市場の変化に応じてさまざまな課題が山積していますが、課題解決のひとつにAIが有用であると言うことができます。

本記事は生産管理における課題を取り上げ、「なぜAIが有用なのか」「AI導入による効果はどのようなものがあるか」などを解説します。

生産管理における課題とAI化の必要性

製造業における生産管理は課題が多くあります。
近年の課題としてどのようなものがあるか、その解決の糸口としてAIがなぜ有用なのかを解説します。

AIとは

AI(Artificial Intelligence)とは「人工知能」という意味で、大まかに言えば「人間の知的活動をコンピューターによる技術で再現したもの」です。

AIに使われている技術の中で代表的なものは機械学習です。コンピューターが自ら学習するディープラーニング(深層学習)という言葉を耳にした人も多いと思います。そのディープラーニングも機械学習のひとつです。
機械学習は、データを分析し、パターンやデータ同士の関係性を見つけるために使われる技術です。大量かつ複雑なデータをコンピューターに読み込ませ、そこからデータ内の関係性を抽出することができます。そして学習した結果を元に、新しいデータに対して予測を行うことが可能になります。

また、AIの最適化アルゴリズムを用いることで、莫大なパターンから計算量を落とすことなく、最適なパターンを算出することが可能になります。これは人間の頭では時間がかかる複雑なパズルが短時間で解けるようなものです。最適化のAIは必ずしも学習を必要とせず、過去のデータが必要ない場合もありますが、一方で、具体的なパターンを選択する条件やルールを示す必要があります。

生産管理における近年の課題

製造業の企業は、品質・コスト・納期のQCDを最適化することで、競争力を維持できます。生産管理はQCDを追求するために欠かせない業務であり、その範囲は生産計画や在庫管理、購買など多岐にわたるのも特徴です。

近年では調達~販売までのサプライチェーンの複雑化や人手不足、また需要予測の不確実性が増しているため、従来のシステムだけで対応するのは難しくなりました。さらに消費者ニーズの多様化により、製品ラインナップが増えたことも生産管理を難しくする要因でもあります。

たとえば生産計画の立案に長い時間を要したり、在庫の過不足が発生したりするなどの課題は多くの現場で起きている課題でしょう。

生産管理・生産計画でのAIの必要性

では、生産管理にAIを活用するとどうなるでしょうか。

AIが得意なことのひとつは、過去のデータから将来のデータを予測することです。そのため生産管理にAIを活用すれば、人間や従来の生産管理システムなどでは対応が難しかった需要予測やそれに基づいた在庫管理を行えるようになります。

ほかには、複雑な条件下で最適なパターンを瞬時に算出することです。AIを活用すれば、生産計画や作業計画といった複雑な業務において、特定の担当者のスキルに依存することなく、信頼性のある計画作成を行えるようになります。これにより、人為的なミスを防ぐことができ、業務の効率化にもつながります。

また、AIの活用は人手不足の解消にだけ貢献するわけではありません。
AIの活用により、生産活動の全体最適化による生産性向上や無駄の削減が期待されます。さらに、業務を効率良く進められることで、生産管理の担当者はコア業務に注力できたり、スキルアップの時間を作れたりするなどの効果にも期待できます。

生産管理においてAIを活用できる範囲

では、AIは生産管理のどのような業務に活用できるのでしょうか。解説していきます。

生産管理・生産計画でのAIの必要性

生産計画にAIを活用すれば、自動的に計画を立案することができます。生産計画は人間が行うには難度の高い業務のひとつです。現場の生産能力や稼働状況など計画立案時に考慮しなければならない要素が多いためです。

たとえば金型を使う生産ラインがあるとします。製品を切り替える時には金型を変える作業(段取り替え)が必要になりますが、段取り替えのタイミングが複数のラインで重なると、設備には作業待ちの非稼働時間が発生します。すると、全体の作業の遅れにつながるため、稼働率が低下する可能性があります。

このような場合、段取り替えが重ならないように製品の投入順序を考える必要がありますが、複雑すぎて人間だと時間がかかり、ミスも起こります。

生産計画にAIを活用すれば、このような場合でも複雑な条件をなるべく満たすパターンを採用することで、最適な投入順序を決められるため、最適化された生産計画を自動で作成することが可能になります。

精度の高い需要予測

生産計画の元になるのは需要予測です。需要予測は「いつ、どの製品が、いくつ注文されるかを分析して予測する」ものですが、消費者ニーズの多様化や多品種少量生産への対応により正確に予測することが難しいという問題があります。

しかし、需要予測の精度をAIにより向上させることができます。過去の受注情報や納入実績をデータとして学習すれば、製品ごとや月ごとの受注見込みを精度高く予測します。ただし、過去のデータから学習するため、コロナ禍やウクライナ情勢などの予想外の事態は予測できない点には注意が必要です。

在庫の適正管理

製造業では一定の在庫を保持しておくことが一般的です。在庫があれば需要の変動や急な納期変更にも対応することが可能になるためです。ただし、在庫が多くなると企業のキャッシュフローが悪化する要因になり、逆に在庫が少なすぎると欠品や納期遅れにつながるリスクがあります。

在庫管理を適正に行うためには、需要予測や生産計画との連携が欠かせません。上述のように需要予測にAIを活用することで、過去のデータから商品ごとの受注数を予測し、在庫を適正化することに役立ちます。

また、生産計画にAIを活用することで、需要の変動や急な納期変更の際にもリードタイム(納品までの時間)を瞬時に把握できるため、最適な在庫量を維持できます。そのため、これらはシームレスにデータ活用できるような環境構築が重要です。

生産管理にAIを導入するメリット

製造業の業務はAIとの相性が良く、積極的に活用することでさまざまなメリットを享受できます。

メリット1 属人化と人材不足の解消

1つ目のメリットは属人化と人材不足の解消です。例えば生産計画の立案は、現場の作業員にしか分からない暗黙知が多くあるため、属人化しやすい業務です。しかし、その暗黙知をデータとして取り込み、AIを活用することで、最適な生産計画を自動で作成することが可能になります。

また人材の確保に苦労する企業は多いでしょうが、AIで業務を自動化したり、単純な作業をAIに任せたりすれば、業務は効率化し少ない人員でも業務を回すことができます。

メリット2 過剰在庫や品切れのリスク低減

需要予測を人間だけで行うのは難しい面があり、多めに見積もってしまうと過剰在庫になり、反対に少なく見積もると品切れのリスクがあります。

先述したとおり、AIは需要予測にも活用できるものなので、精度の高い予測が算出可能です。これにより、作りすぎのムダや欠品といったリスクを最小限に抑えることができます。

メリット3 作業の効率化(作業時間の短縮)

AIシステムは設備の状態や稼働データを分析することで、最適な生産計画を立案します。例えば、稼働時間や需要の変動に応じて、設備の稼働スケジュールを最適なものに調整することが可能です。これにより、設備の待ち時間や停止時間を最小限に抑え、生産ラインの滞りを解消します。

また、AIシステムは生産計画や需要予測などをもとに、最適な人員配置を提案します。生産ラインや作業の負荷を考慮しながら、作業員のスキルや労働時間を適切に割り当てることができるのです。

生産管理におけるAIの導入事例

生産計画を最適化するシステムに生産スケジューラがあります。ここではAIを活用した生産スケジューラ「最適ワークス」の導入事例を2つご紹介します。

生産スケジューラについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「生産スケジューラとは?導入メリット・導入の流れを解説」

属人化の解消

ある電子部品メーカーでは、製品の生産計画を作成する業務が計画担当者に偏っており、属人化していました。このリスクに対処するため、最適ワークスの導入を決めました。生産スケジューラであれば、自動車部品の生産や組立工程にも対応し、制約条件の多さにも対処できます。

導入はスモールスタートで行い、約3ヶ月で仮運用に進めることができました。最適ワークスの導入により、生産計画の自動立案が可能になり、属人化が解消されました。生産計画の作成業務が軽減され、より生産性の高い計画を作成する業務に注力できるようにもなりました。

詳しい内容はこちらをご覧ください。
最適ワークス 導入事例「自動車部品の組立工場で、安定した製造のため生産計画の属人化を脱却したい」

AIによる生産計画の自動立案

ある飲料メーカーでは、生産計画作成に多くの手間と時間がかかっていました。生産計画はエクセルを使用し、顧客の生産依頼や出荷見込みなどを考慮して製造順序を計画していました。しかし、市場や原材料の状況により頻繁に生産量変更が必要であり、計画の修正に大きな負担がかかっていました。そこで、生産スケジューラを導入し、製造順序を自動的に立案することにしました。

その結果、生産計画作成の手間が大幅に削減され、特に繁忙期の業務負荷が軽減されました。計画作成にかかる時間は約63%減少し、毎日の修正作業にかかる時間も1時間から30分に短縮されました。また、効率的な製造順序により製品切り替え時の段取り頻度も減少し、工数削減だけでなく、洗浄処理にかかる資材の使用量削減の効果も期待されます。

詳しい内容はこちらをご覧ください。
最適ワークス 導入事例「飲料メーカーの充填工程にて日々激動する生産量にあわせ最適な製造順序を決める」

AIを活用した生産管理システム導入の注意点

ここまでの内容からAIの活用を検討したいと考えている方も多いでしょう。
しかし、AIの活用や新たなシステムの導入が上手くいくか不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで、この章では、AIを活用したシステム導入の注意点をご紹介します。事前に注意点が分かれば、安心してシステムの導入が進められるでしょう。

適切な目標設定

AIを導入するにあたって、適切な目標設定をすることも忘れてはいけません。

AIはさまざまな課題を解決することに役立ちますが、全ての課題を解決できるわけではありません。最初から完璧を目指すのではなく、特定の業務の課題解決を目的にAIを導入するなどスモールスタートをすることが大切です。
そのうえで「〇%向上」「〇時間削減」などの具体的な目標を設定しましょう。

部署間の意思疎通

生産管理の分野は対応業務が幅広いため、AIシステムの導入により業務が変化するのは生産管理だけでなく、営業や購買、製造、経理など多岐にわたります。
したがってAIシステムの導入プロジェクトでは関係するさまざまな部署で意思疎通を図り、目的を共有することが重要となります。相互理解があいまいなままでAIシステムを導入しても最大限の効果を得ることができません。

既存業務フローの見直し

システムを既存業務に合わせることだけに固執しない点もポイントです。導入に伴い既存業務の中から課題が出てくるのであれば、対応するべきです。時には業務フローを見直して、AIを活用しやすい土台作りもしなければなりません。

自社での主体的な取り組み

AIシステムの導入にあたり、ベンダーなどの外注先に丸投げしてはいけません。AIの活用を進めるには、自社にある過去のデータや現場の暗黙知をシステムに落とし込んでいくことが必要になりますが、それだけでなく、設定の改善や微調整などが必要になります。AIをより最適に利用できるようにする、このような作業には自社が主体的に取り組む姿勢が重要となります。
そのためにも、AIシステムを導入する際には、自社内にプロジェクトリーダーやメンバーを選定し、AIシステム導入を推進できる体制を構築しておくといいでしょう。

生産管理でAIを活用することについてのまとめ

生産管理は多くの課題がある分野ですが、AIの導入が課題解決につながります。導入のメリットは属人化の解消や人手不足だけにとどまらず、今まで時間がなくて注力できずにいたコア業務に専念できるといった点も挙げられます。

AIは生産管理の業務の中でもさまざまな範囲に活用できるため、ぜひ自社の課題に合ったAI活用を検討してみてください。

生産管理の中でも生産計画は重要な業務のひとつですが、「最適ワークス」はAIにより最適な生産計画を自動立案します。計画立案において「時間がかかって困っている」「特定の人にしかできない」「修正に手間取っている」などの課題があれば一度検討してみてはいかがでしょうか。