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【製造業】多品種少量生産のメリット・デメリット|効率化の事例も紹介

【製造業】多品種少量生産のメリット・課題|効率化の事例も紹介

消費者ニーズの多様化に応え、在庫リスクも抑えられることから、多くの企業が多品種少量生産を行っています。しかし、少量ずつ多品種を生産する方法は、多くの課題を抱えている企業も珍しくありません。

今回は多品種少量生産のメリットや課題を整理したうえで、課題を解決する方法、効率化に成功した事例などを紹介します。

多品種少量生産とは

多品種少量生産とは、さまざまな種類の製品を少量ずつ生産する生産形態のことです。自動車メーカーに当てはめると、セダンタイプやSUV、クーペ、ミニバン、軽自動車など多種多様な製品を、少しずつ生産することになります。

多品種少量生産の反対は、少品種大量生産です。製品のラインナップを絞り、一度にまとめて生産を行います。自動車メーカーの例で言えば、セダンとSUV、軽自動車だけに製品を絞り、その三種類を大量に生産する方法です。

多品種少量生産は、少品種大量生産に比べてコスト削減の効果などが大きいことから、多くの企業が採用しています。その一方で、正確な需要予測や生産計画が必要なため、課題も残されています。

多品種少量生産が求められる背景

多品種少量生産が求められている理由は、「顧客ニーズの多様化」です。かつては、決まった製品を大量生産しても売れていました。しかし、近年は顧客のニーズが多様化しており、それに合わせて多種多様な製品を販売して、競合他社と差別化を図る企業が多くなりました。

また、「在庫を極力持たず、ムダをなくしたい」という企業側のコスト削減の意識も背景にあります。企業は在庫を抑えるために、下請け企業には注文したらすぐに納品することを要求します。そのため、多くの中小企業は少量ずつ生産していることで、短納期に応えているのです。

多品種少量生産のメリット

多品種少量生産のメリットとしては、「顧客ニーズに対応できる」と「過剰在庫のリスクがない」の2点があります。

メリット1 顧客ニーズに対応できる

先述したように多品種少量生産が求められる背景として、顧客ニーズの多様化が挙げられます。企業としては多種多様な製品ラインナップを取り揃えることで、デザイン性や品質、価格、機能といった細かいニーズを満たすことができます。

一方、顧客のニーズを考えずに少品種で生産していたらどうでしょうか。この場合には購買意欲を刺激することができず、売上を伸ばすのは難しいでしょう。環境に配慮したSDGsが要求されるなど、時代の変化が激しい今の世の中では、顧客のニーズに応えるためにも多品種少量生産が効果的なのです。

メリット2 過剰在庫のリスクがない

過剰在庫のリスクが少ないのも、多品種少量生産のメリットです。

一般的な企業は、顧客の注文内容を予測し、生産計画を立てて生産を行います。この場合に、一度に多くの製品を作る大量生産では、当初の見込みよりも注文数が減った場合に売れ残りが発生することになります。売れ残った製品は在庫を圧迫し、場合によっては廃棄処分になるケースもあるでしょう。そうなっては、大きな損失です。

しかし、多品種少量生産ならロットを小さくして生産するため、急に注文数が減ったとしても在庫が過剰になるリスクは少ないのが特徴です。これによりキャッシュフローを悪化させる在庫のムダを抑えることができます。

多品種少量生産の課題

多品種少量生産は現在のモノづくりにおいて欠かせない生産方式ですが、その一方で、製造現場では多品種少量生産ゆえの課題も山積しがちです。

課題1 コストが増加する

一つ目の課題は、製造にかかわるコストが増加する可能性があることです。一般的に多品種少量生産は大量生産に比べて、原材料を調達する時に一回当たりの調達量が少なくなります。そのため、大量に仕入れる時に比べてコストが増加しやすくなります。

また、生産ラインにさまざまな製品を流しても対応できるようにするには、設備や人員も準備しなければなりません。コスト増加の要因は、こういった設備や人員を確保するためのコストも含まれます。

課題2 生産効率が低下する

生産効率が低下するのも、多品種少量生産の課題として挙げられます。生産効率は、一つの同じ製品を作っている時間が長くなればなるほど良くなる傾向にあるため、可能な限り、段取り替えを減らすことが重要です。

しかし、一つの生産ラインで多種多様な製品を作ることになると、製品の切り替えに伴う段取りが増えることになります。さらに段取りに要する時間が長くなると、その分だけ設備の稼働をストップさせるため、効率が悪くなるのです。

課題3 生産計画の立案が難しくなる

多品種少量生産は、「いつ・どの製品を作るか」という生産計画の立案が難しくなるのも特徴です。なぜなら、少品種大量生産に比べて生産計画の組み合わせパターンが多くなるからです。

たとえば、3品種を2つの生産ラインで作る時と、10品種を2つの生産ラインで作る時とでは、10品種の方が考えられるパターン数が多くなるのは容易に想像できるでしょう。そのため、生産計画は膨大なパターンの中から最適なものを選ぶ必要があり、難度が高くなるのです。

また、予期せぬトラブルが発生すれば、その都度生産計画の変更が必要になります。その場合も難度が高くなると言えるでしょう。

課題4 納期回答に時間がかかる

多品種少量生産では納期回答に時間を要するのも課題です。

課題3の「生産計画の立案が難しくなる」に通じるところですが、顧客から新しいオーダーが入った時に「どの生産ラインで作るか」「その場合、いつまでに出来るか」を考えるのは簡単ではないからです。

生産ラインの負荷状況を把握できていない場合には、正確な納期を算出するのはさらに難しくなるため、顧客から引き合いがあった場合に納期回答を迅速にできないのです。

課題5 生産リードタイムの長期化

多品種少量生産では、生産リードタイムが長くなる可能性があります。一般的に小ロットで生産すればするほど、生産リードタイムは短縮できると言われています。しかし、多種多様な製品を作るために、他の製品を作っている間は工程の待ち時間が発生することがあります。

また、生産する製品の切り替えのために段取りも必要になるため、生産計画の精度が悪いと段取り待ちの時間などが発生し、生産リードタイムが長期化する可能性が高くなります。生産リードタイムが長くなると、納期遅れにつながりやすくなるため、企業としては解決すべき課題です。

多品種少量生産を効率的に行うには

多品種少量生産には課題が多数ありますが、効率的に行う方法にはどうすればよいでしょうか。現状の分析方法やソリューションシステムなどを紹介します。

方法1 受注パターン・生産方式を分析する

製品ラインナップが多種多様であれば、製品ごとに受注パターンがあるはずです。その受注パターンを分析し、適した生産方式を採用すれば効率化につなげることができます。

受注パターンとしては、以下の4パターンが存在します。

1.受注回数が多く、ロットサイズも大きい「多頻度大ロット」
2.受注回数は多いが、ロットサイズは小さい「多頻度小ロット」
3.受注回数は少なく、ロットサイズは大きい「少頻度大ロット」
4.受注回数は少なく、ロットサイズも小さい「少頻度小ロット」

たとえば「少頻度大ロット」「少頻度小ロット」であれば、生産効率に与える影響は少ないため受注生産で対応し、「多頻度大ロット」「多頻度小ロット」は在庫をある程度確保して対応するという方法が有効だと考えられます。

方法2 段取りを効率化する

品種の切り替え時に必要となる段取りを効率化すれば、多品種少量生産の課題を解決できます。特に射出成形やプレス成形のように金型を使う場合には、段取りに長い時間がかかる傾向にあります。

そのため、生産をストップさせないで行う「外段取り」でできる作業を増やして、段取りの時間を短縮させると生産効率は上がるでしょう。時間短縮だけでなく、そもそもの生産計画の段階で段取り回数を少なく計画するのも効果的です。

方法3 生産管理システムを導入する

生産管理システムとは、受注や購買、生産計画、工程、原価といった生産にかかわる情報を一元管理できるシステムのことです。エクセルなどで工程管理や購買管理を行っていると、情報を集約できず効率的に業務を遂行できていない場合があります。

生産管理システムでは、部門を越えて情報の共有できるため、進捗状況の把握を確実にできます。情報が各部門に散在しがちな多品種少量生産の課題を解決するシステムです。

生産管理システムについては、こちらで詳しく解説しています。
「生産管理システムとは?機能・メリット・選び方のポイントを解説」

方法4 生産スケジューラを導入する

生産スケジューラとは、生産計画を自動化できるシステムのことです。先述のように多品種少量生産の生産計画では、段取り回数や納期、負荷状況、制約条件など考慮すべき要素が多すぎるために人手だと最適化するにも限界があります。

しかし、生産スケジューラなら事前にマスターデータやルールを設定しておけば、後は自動で最適な生産計画を導き出してくれます。「納期回答を素早く行いたい」「生産計画にかける時間を短縮したい」といった多くの課題を解決できるシステムが生産スケジューラなのです。

生産スケジューラについては、こちらで詳しく解説しています。
「生産スケジューラとは?導入メリット・導入の流れを解説」

多品種少量生産の効率化に成功した事例

ここでは、生産スケジューラ「最適ワークス」の導入により多品種少量生産の効率化に成功した事例を紹介します。

ある飲料メーカーでは以下のような課題がありました。
課題1:生産量の変更が頻繫にあり、生産計画の修正負荷が大きい
課題2:製造作業を効率良く行うため、生産計画で考慮する項目が多い

生産計画の立案は担当者が月に一度丸一日かけてエクセルで行っており、原材料の手配状況などの影響により生産量の変更があった際には、修正作業に毎日忙殺されていました。

それに加えて、多品種少量生産を行う中では、どのような順番でどの製品を作るかという製造順序を考えるのも難しいものでした。生産する品種が変われば洗浄や殺菌作業、段取りが必要になるため、なるべく洗浄時間や段取り回数が少ない製造順序を考える必要がありますが、考慮すべき項目が膨大な数あったためです。

そこで、効率のよい製造順序を考えるために生産スケジューラを導入したのです。生産スケジューラで制約条件を設定して何度も改善をしていくうちに、製品の切り替え時に生じる段取り頻度や洗浄に必要とする資材量の削減を実現しました。さらに生産計画にかける時間も以前に比べて約63%カットを実現しています。

より詳しい事例の紹介は、こちらをご覧ください。

まとめ

顧客ニーズが多様化した現在では、多くの企業が多品種少量生産を採用しています。しかし、多種多様な製品を少量ずつ生産するために、「コスト増」「生産効率の低下」「生産計画の立案が難しい」などの課題も山積しています。

このような課題を解決するには、段取りの効率化や受注パターンの分析などが効果的です。特に生産スケジューラは生産計画にかかる時間を短縮できるほか、段取りの効率化にもつながるため、多品種少量生産ゆえに課題を抱える企業にぜひ導入してほしいシステムです。