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製造プロセスの最適化を加速する『生産スケジューラ』とは?導入メリット・導入の流れを解説

「生産スケジューラ」は、生産管理において導入するメリットが大きいシステムです。納期短縮やコスト削減といった課題に直面している企業では、生産スケジューラを導入することで解決につながる可能性があるからです。

本記事では、そもそも生産スケジューラとは何か、導入のメリットや流れなどについて解説します。

生産スケジューラとは

生産スケジューラとは、生産計画を自動立案できるシステムのことです。製造現場のリソース(人員、設備、材料など)を適切に割付けた、最適な生産計画の立案を目的としています。生産計画は月ごと→週ごと→日ごとに立案するのが一般的ですが、詳細にすればするほど納期や在庫、作る順番など多くの要素を考慮しなければなりません。そのため、人手で立案することは大変難しいものです。

しかし、生産スケジューラを活用すれば最適な計画を導き出せます。具体的な特徴としては以下のようなものがあります。

時間単位・分単位での生産スケジューリング

一般的な基幹システムだと、日ごとなどの大まかな生産スケジューリングしかできません。

一方の生産スケジューラは、時間単位・分単位の細かさでスケジューリングができます。より緻密な計画を立てることにより、製造現場の能力を無駄にすることなく効率的な生産が可能となります。

現場の生産能力を加味したスケジューリング

生産スケジューリングを難しくする要因の一つに、現場の生産能力を加味しなければならない点があります。たとえ納期遅れのない計画を立案しても、現場が対応できないほどの生産量が組み込まれていれば、その計画は実行できないからです。

生産スケジューラにはマスターデータの登録機能があるため、人員や設備といったリソースを考えた上で生産スケジュールを立てることができます。

現場にあるさまざまな製造条件を反映

製造現場では、生産をするときの条件が細かく決められています。たとえば射出成形は成形機や製品によって使用する金型が異なり、旋盤加工や研磨などの工程は熟練の作業員にしかできない場合があります。

このような複雑な製造条件(≒制約条件)を把握しながら計画を立案するのは、熟練の担当者にしかできない職人技になっていることが多くあります。しかし生産スケジューラは、最初にルールさえ設定してしまえば、ルールに基づいて最適なスケジューリングをしてくれます。

生産スケジューラとエクセルの違い

生産計画作成にエクセルを使用している企業も多く存在しますが、生産スケジューラとエクセルの違い、エクセルで生産計画を作成するリスクをもとに、生産スケジューラ導入が求められる理由を説明します。

生産スケジューラとエクセルの違いは、「マスターデータの管理ができるか」「設定したルールを後から変更しやすいか」「計画変更に柔軟に対応できるか」という点です。

生産計画にエクセルを使用している企業も多く存在しますが、エクセルは生産計画に特化したソフトウェアではありません。そのため、どの工程でいつ何を作るかといった詳細なスケジューリングは難しいものがあります。また、熟練担当者が頭の中で考えた生産計画をエクセルに反映するといった使用方法では、業務が属人化します。

一方の生産スケジューラは、先述した特徴の通り、ルールを設定することで、時間単位・分単位での詳細なスケジューリングが可能です。

エクセルでもマクロ等を組んで、どの工程でいつ何を作るかといった詳細なスケジューリングは可能です。しかし、エクセルではマクロを組んだ本人でしか設定したルールやロジックを把握できないことが多く、マスターデータの管理ができないので、制約条件が暗黙知化しやすいです。すると、設定したルールを後から変更することが難しくなり、結果、メンテナンス業務が属人化するという問題が発生します。

また、急な納期変更や原材料の納品遅れ、生産トラブルにより、一度立てた生産計画を見直す必要もあるでしょう。その時にエクセルだと計画変更に手間がかかり、関係者に共有しづらいというデメリットがあります。

生産スケジューラは生産数や納期の変更に応じて、再計算する手間が少なく、計画変更を関係者に共有しやすい機能が備わっています。

生産スケジューラと生産管理システムの違い

また、生産スケジューラと混同されやすいシステムに生産管理システムがありますが、それぞれ対応する領域や得意不得意が異なることを理解しましょう。

生産管理システムとは、生産プロセス全体を管理・連携するためのシステムです。一般的な生産管理システムの機能には、「生産計画」「工程管理」「購買管理(調達管理)」「在庫管理」などが備わっています。

生産スケジューラと生産管理システムの違いは、主に「対応できる業務の範囲」と「粒度」です。

対応できる業務の範囲で言えば、もちろん生産管理システムの方が多くの業務をカバーできます。生産管理システムは、異なる業務や部門を跨いでデータ連携させることが得意です。生産スケジューラでは、受注情報や販売計画、原価計算といった分野まで対応するのは難しいものがあります。

一方で、生産スケジューラでは生産管理システムよりも、生産計画の粒度が細かく、精度が高くなります。生産管理システムにも生産計画の機能はありますが、月次・週次などの大まかな計画を立てることに使われるのが大半です。また、生産スケジュール機能に特化した最適化は不得意な場合があります。

生産スケジューラは、どの工程でどの品目を作るか、何時何分に第一工程をスタートするか、といったより詳細な計画立案に使用できます。リソースや時間制約を考慮した最適なスケジュールを立案することが得意です。

生産管理システムについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
「生産管理システムとは?機能・メリット・選び方のポイントを解説」

生産スケジューラの導入メリット

では、生産スケジューラを導入することで、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なメリットを5つ紹介します。

生産計画業務に関する効果

1 属人化の解消

生産現場には多種多様な制約が存在します。制約とは、たとえば「C製品からD製品へ切り替える時には通常よりも時間がかかる」「A製品はBという金型でしか作れない」などです。

計画の立案者はこのような現場独自の制約条件を熟知している必要がある他、納期や在庫など、さまざまな要因を考慮するため、計画立案は膨大な時間がかかるものです。

また、近年の多品種少量化により、生産計画で考慮すべき制約がさらに複雑化しており、人間の頭で考える限界に達しているケースも多く存在します。

したがって、生産計画はよく属人化すると言われます。しかし、現場の多種多様な制約条件も生産スケジューラに落とし込むことができるのです。生産スケジューラの導入過程では、現場のみが知る制約(暗黙知)を洗い出すことにつながります。これにより、誰であっても高精度の生産計画が立案できるため、属人化リスクの解消につながります。

2 計画立案の時間短縮

一般的に、詳細な生産計画をエクセルなどで立案しようとすると膨大な時間がかかるものです。計画立案ができる担当者が限定されていると、日々の大半を計画作成と計画修正に費やすなど、その業務負荷が重くのしかかります。計画にかける時間の短縮は、生産管理の課題とも言えます。

しかし生産スケジューラを導入すれば、これまで人手で考えていた生産計画を、システムが自動的に計算して最適なものを導き出してくれます。複雑な計画を高速で計算するため、何時間もかけていたスケジューリング作業を大幅に短縮できるでしょう。また、計画変更時にかかる再計算にかかる時間も大幅に短縮されます。

生産計画の自動立案による効果

1 生産現場の見える化

生産スケジューラの特徴の一つとして、各工程の生産指示をガントチャートで表示できる点があります。ガントチャートでは、縦軸に切断や研磨、旋盤加工といった各工程が並び、横軸は時間となります。

このような形での生産計画を共有すれば、各工程の生産状況を一目で把握することが可能です。たとえば旋盤加工の工程からすれば、「前工程の切断工程で今作られている製品はどれか」「部品はいつまでに届くか」「後工程にはいつまでに部品を送ればよいか」などがガントチャートを見れば分かるようになるのです。

生産現場が見える化できるようになると、いままで部門ごとにしか最適化できなかった生産体制が部門間を横断した全体最適なものへと移行することができます。

2 生産計画の最適化

生産スケジューラでは現場の負荷状況を加味しながら、どの製品をどの生産ラインで作るかが決められます。これにより、負荷がオーバーした生産ラインがあれば、自動で他のラインに割り振られるので、設備の過剰稼働は最小限に抑えながら、納期に遅れるリスクを避けられます。

また、ルールの設定により、段取り時間・工数を削減したり、製造順序や組み合わせを最適化したり、全体的な生産効率を向上できます。納期を守りながら、効率的な製造を可能にすることで、残業削減や内製化率アップによる収益の最大化を目指せます。

3 リードタイム短縮

リードタイムとは生産を開始してから終了するまでの時間のことです。このリードタイム短縮はどの企業も追求しているものですが、生産スケジューラで実現することが可能です。

たとえば基幹システムやエクセルだと、日単位の固定リードタイムで計画を作成することが多くなります。しかし、生産スケジューラは数量あたりの製造時間というサイクルタイムでも計算できるため、リードタイムをより短縮することが可能です。

また、工程が複数あるとどこかに生産時間が一番長いボトルネック工程が存在します。リードタイム短縮のためには、ボトルネック工程とその前工程・後工程の着手タイミングを合わせることが大切です。生産スケジューラではボトルネック工程と同期するように、他の工程を計画できるため、より効率的な生産を実現できます。

生産スケジューラを導入する流れ

生産スケジューラに限らず、一般的にシステムの導入は難しい場合があります。ここでは生産スケジューラの導入を失敗させないために、基本的な導入の流れについて紹介します。

ステップ1 導入の検討

まずは導入の検討をします。このステップでは現状把握と導入目的を明確にすることが大切です。

導入の目的を曖昧なままプロジェクトを立ち上げたり、生産スケジューラを導入すること自体が目的になったりするとプロジェクトが頓挫することがあります。そのため「現状において解決したい課題は何か」「導入した後の効果は数字に落とし込むとどれぐらいか」などを自社ではっきりとさせておきましょう。

ステップ2 システム化範囲の検討

導入の流れの中でも重要なステップの一つです。自社の業務の中でどの範囲までシステム化するのが適切かを判断します。生産スケジューラは最適な生産計画の立案に特化したシステムです。生産計画業務の改善を目的とした場合にも、計画精度の向上、計画自体の見える化、部門間を跨いだ情報共有、予実管理など、期待される効果はさまざまです。

しかし、生産スケジューラで対応する範囲が広くなるほど導入が難しくなります。既存システムとの連携や他の可視化ツールとの併用なども視野に入れ、まずは実現可能な範囲でスモールスタートを検討していくことが大切です。

ステップ3 製品の選定

各社・各工場で製造しているものは異なるため、導入に当たっては必要に応じて個別カスタマイズが求められます。生産スケジューラにもさまざま製品がリリースされていますが、カスタマイズも含めて自社の製造条件に対応できる製品かを見極めていきます。

特に重要なのは、自社主導でのカスタマイズができることです。自社主導でのカスタマイズができないと、システムはベンダー任せで簡単に設定変更できない、自社内にシステムのことを理解している人がいない、といった運用の失敗に陥りがちです。

導入後の運用を考え、自社主導でマスターデータの設定や修正が行えたり、現場の改善がスムーズに計画に反映できたりするかを検討しましょう。

無料トライアルや製品の体験版をダウンロードできれば、それを利用して検証しましょう。

ステップ4 運用方法の検証やマスターデータの整備

プロトタイプを作成しながら運用方法の検証を行うステップです。この段階で各社・各工場の制約条件(製造条件)を要件定義しますが、プロトタイプの検証・改善を繰り返しながら導入を進めていくアジャイル型で進めていくことが成功の秘訣でもあります。

なぜなら、生産計画における重要な制約条件は現場しか知らない暗黙知が多くあるからです。そのため、導入プロジェクトの初期段階で要件定義を行うウォーターフォール型だと、最初からすべての条件を実装することが難しいのです。

アジャイル型での導入を取り入れれば、アウトプットを見ながら条件を洗い出せるため、プロタイプの精度を徐々に向上することができます。

ステップ5 本稼働

プロトタイプで基本的に問題がないことを確認したら、実際の業務で生産スケジューラを稼働させます。社内教育や運用のルールなどを事前に作っておくと本稼働もスムーズにいきます。

製造プロセスの最適化を加速する生産スケジューラなどの管理システム導入についてのまとめ

生産計画は製造業の中でも重要な業務ですが、多品種少量生産や納期短縮を求められている中で、より難度が高まっています。そのため、最適な計画を自動立案できる生産スケジューラの導入メリットは多大なものがあります。

現在、生産計画に課題を感じているのなら、積極的にシステムの導入を検討してみるといいでしょう。