- コラム
製造業の工程管理とは|目的や手順、生産管理との違いなどを解説
工程管理は製造業の生産プロセスをコントロールするための業務です。納期遵守や生産性向上に欠かせない工程管理ですが、生産管理と考え方が近いため混同されやすい面があります。
工程管理と生産管理の目的の違いを抑えておくことで、生産プロセスを正しい方向に導くことができます。
そこで本記事では工程管理の目的や方法、そして生産管理の違いなどについて解説します。
工程管理とは
工程管理とは、生産計画の立案や生産の進捗・実績を管理することを指します。
多くの工場では原材料を仕入れて加工を行います。加工したモノを次の工程へ引き渡し、次工程での加工を行うということを繰り返していき、最終的な納品物が出来上がります。製品の加工、そして次の工程への移行までの一連の作業を計画し、管理することが工程管理です。
工程管理はQCD(品質・コスト・納期)の中でも、主に納期を管理するための業務です。具体的には顧客が提示する納期を守るために生産計画を作成し、生産の進捗を管理します。
ただ、工程管理は納期の遵守だけでなく、コストの削減や生産性向上にも寄与できます。さらに生産現場にムリがかからない計画を作成すれば、品質の安定にもつながります。
工程管理の目的
工程管理の重要さを理解するために、主な目的について見ていきましょう。
目的1 納期の遵守
納期の遵守は、工程管理のもっとも重要な目的です。一般的には、納期に間に合うように優先順位を考えながら生産計画を作成していきます。しかし、いつも計画したとおりに生産が進むわけではなく、生産現場のトラブルなどで進捗が遅れることもあります。
そのため、工程管理では進捗状況を把握し、管理することも大切な業務です。
また、納期を遅らせる原因を取り除いていく改善施策や、作業者のスキルアップのための教育なども納期の遵守のために必要な取り組みです。
目的2 生産リードタイムの短縮
2つ目の目的は生産リードタイムの短縮です。生産リードタイムとは、生産を開始してから完了するまでの期間を意味します。
この生産リードタイムは短ければ短いほど短納期化に対応でき、企業の競争優位につながります。したがって、工程管理でリードタイム短縮を図る必要があります。リードタイム短縮のポイントとしては、工程のムダを省き、生産に流れを作ることです。
目的3 生産量の調整
日々の生産量を調整するのも工程管理の目的の一つです。
需要は変動するものです。しかし、生産量の多い時には人員や設備が足りなくなり、生産量の少ない時には人員や設備を余らせる状況は、生産効率が良い状態とは言えません。
そこで生産数を月ごと、または日ごとに均一にして人員や設備に無理がかからず、かつ手待ち時間が少なくなるように生産負荷を調整する必要があるのです。
目的4 生産効率の向上
現場のムダな作業や時間、ムダな手待ちを少なくして、生産効率を上げることも目的となります。工程管理によって生産効率が決まると言っても過言ではありません。
たとえば最終工程に組み立て工程があった場合、前工程で必要な部品を用意しておかなければ、最終工程は生産に着手できず手待ちが発生します。
そのため、最終工程の前工程で部品を用意させるように指示・計画する必要があります。工程管理の良し悪しが生産効率につながると言えるでしょう。
工程管理と生産管理の違い
業務範囲が重なっているためか、工程管理と生産管理はよく混同されますが、工程管理は生産管理の一部です。
工程管理と生産管理の違いは、管理する業務範囲が異なる点にあり、生産管理の方が対応する業務範囲は広くなります。
生産管理の主な業務は、以下のとおりです。
・生産計画の立案
・原材料や資材の調達
・在庫管理
・製品の受注や出荷
・原価管理
一方の工程管理は、生産計画や生産現場の進捗・実績の管理を行います。
また、生産プロセス全体を最適化することが目的の生産管理に対し、工程管理は納期を遵守することが主な目的です。
工程管理と進捗管理の違い
もう一つ、工程管理と混同されやすいものに進捗管理があります。どちらも納期を守るための業務ですが、進捗管理は工程管理の一部となります。
工程管理と進捗管理では、対応する業務の範囲が異なります。工程管理の方が業務範囲は広く、企業のヒト・モノ・カネを管理する役割を担います。業務内容としても生産計画の立案から作業指示、実績収集といった幅広い業務を担当します。
一方、進捗管理は工程が予定どおりに進んでいるかなど、スケジュールの管理を行う業務です。生産は計画どおりに進まないことも多いため、生産と計画がどのくらい食い違っているかを進度管理表や日程管理板などを用いて把握するのが進捗管理となります。
工程管理の手順
工程管理の流れは、計画立案→指示・実行→評価→改善となります。Plan・Do・Check・ActionというPDCAサイクルが基本的な手順です。
手順1 生産計画を立案する(Plan)
工程管理は生産計画の立案から始まります。生産計画には、大日程計画・中日程計画・小日程計画が含まれていますが、工程管理では主に中日程計画と小日程計画を立案します。
中日程計画は在庫と受注の情報を元に、月ごとに製品別の生産数を計画するのが一般的です。小日程計画では「どの生産ラインでどの製品をどのような順番で生産するか」など、週ごとの具体的な計画を決めていきます。
手順2 指示・実行する(Do)
生産計画が決まったら、続いては製造現場に作業指示を出し、生産を実行します。作業指示を出すだけではなく、生産が計画どおりに進んでいるかを把握し、遅れが発生した場合は対応策を考えて遅れを取り戻すことが大切です。
手順3 実績を評価する(Check)
生産の実績を収集し、計画と実績の差異を分析します。具体的には計画に対して実際の生産がどのくらい予定どおりであったかを調べ、計画通りでない場合には原因を探ります。
進捗を遅らせる原因として、作業にかかわる原材料や機械設備、作業者といった要素が考えられるため、それらを中心に真の原因を発見し対処法を考えます。
手順4 課題点を改善する(Action)
進捗を遅らせる原因を排除するため、課題点を改善する段階です。徹底的にムダを省くことで、生産性の向上やリードタイム短縮が実現できるでしょう。
工程管理の一連の流れは、絶え間なく続けることが大切となります。課題を一度に解決するのは難しいため、常に計画と実績の差異を調べて、PDCAサイクルを回していきます。
工程管理の方法(手書き、エクセル、生産管理システム)
工程管理を行う方法として以下の3通りが考えられます。
方法1 手書き
紙やホワイトボードを使い、手書きで生産計画や進捗管理などをする方法です。
手書きはアナログな手法でミスも発生しやすいものですが、現場の作業員にしか分からない暗黙知をより細かく反映できる点が評価され、システムではなく手書きでの管理方法が選ばれている場合があります。
方法2 エクセル
表計算ソフトのエクセルで関数やマクロを組む方法です。マクロを組めば手書きよりも緻密な生産計画を立案でき、生産管理システムでもカバーできない領域にも適用できます。
たとえば基準日程計画を生産管理システムで作成すると、現場の生産能力まで考慮するのは難しいケースがありますが、エクセルだと生産能力を加味した計画を組むことが可能です。
ただし、エクセルで作成すると「担当者しか分からない・変更できない」という問題が発生します。
方法3 生産管理システム
生産管理システムやERPといった基幹システムで工程管理を行う方法です。
情報の見える化や共有をリアルタイムに行えるため、工程管理を最適化できるというメリットがあります。生産管理システムとIoTセンサー等を活用した専用ツールやクラウドサービスを組み合わせて使用する方法もあります。
生産管理システムについては、こちらで詳しく解説しています。
「生産管理システムとは?機能・メリット・選び方のポイントを解説」
工程管理表の種類
生産計画や進捗管理をする上で欠かせないのが工程管理表です。
エクセルや生産管理システム、生産スケジューラなどで作成するのが一般的ですが、工程管理表の種類はさまざまなものがあり、進捗の把握や設備の負荷調整など目的によって使用するものは変わります。
以下は代表的な工程管理表となります。
バーチャート工程表
バーチャート工程表は縦軸に作業項目や工程を、横軸に時間を入力したものです。作業の開始日時と終了日時、工程全体のリードタイムが分かりやすいメリットがあるため、工程表としてはよく使用されています。
ガントチャート工程表
主に進捗状況を把握するために使われている工程表です。バーチャート工程表と似たような見た目ですが、横軸には時間ではなく工程の進捗率を入力します。進捗管理に役に立ちますが、各工程の工数が分かりづらいというデメリットがあります。
グラフ式工程表
グラフ式工程表はバーチャート工程表とガントチャート工程表を組み合わせたもので、縦軸に進捗率を、横軸に日数を表しています。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、各工程を〇印で示し、矢印で各工程を結び付けるものです。作業日数は矢印に表示します。日常的な工程管理ではあまり使用されませんが、プロジェクトのスケジュール管理には役に立ちます。
まとめ
生産プロセスを統制する工程管理は、納期遵守や生産効率の向上には欠かせないものです。工程管理では計画と実績に差異があれば、原因を分析して次の計画にフィードバックするPDCAが重要となります。
生産計画を生産管理システムやエクセルで行っている方も多いと思いますが、生産スケジューラというシステムを導入すればより緻密に、より迅速に計画を立案することができます。工程管理の最適化につながるITツールですので、ぜひご検討ください。
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