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属人化解消の罠|システム化の前に整理すべき「引き継ぎ」3つのチェックリスト

「属人化解消」をテーマに掲げる企業は、年々増えています。生産計画や業務改善の現場でも、この言葉を聞かない日はありません。

一方で、 「取り組みは始めたはずなのに、現場が楽になった実感が乏しい」 そんな声を耳にすることも少なくありません。

それは単なる「やり方の問題」なのでしょうか。それとも、属人化解消という言葉の捉え方そのものに、落とし穴があるのでしょうか。今回は、属人化解消を成功させるために不可欠な「引き継ぎの前提条件」を整理します。


その取り組み、本当に“引き継ぐ”前提ですか?

属人化解消のご相談をいただく際、私たちがまず確認することがあります。それはシステムの話でも、機能の話でもありません。
プロジェクトが「スタートライン」に立っているかを確認するための、3つのチェックリストです。

【Check 1】当事者と「業務を分ける」「引き継ぐ」話ができているか

「いずれ誰かに渡すための準備」であることを、現場と合意できているでしょうか。ここが曖昧なまま進むと、結局「今の担当者が使いやすいだけのツール」を作ることに終始してしまいます。

【Check 2】本人は、心の底から業務を手放したいと思っているか

属人化している業務は、その人の経験や工夫の結晶です。もし本人が「自分の仕事を奪われる」と感じていたり、業務を抱え込むことに価値を見出していたりする場合、どれだけ仕組みを整えても情報の開示が進まず、形骸化してしまいます。

【Check 3】引き継ぐ相手(後継者)が、具体的に想定されているか

「誰に渡すか」が決まっていない状態で進めると、システムの仕様が「汎用的すぎて使いにくい」か「複雑すぎて誰も触れない」かのどちらかに偏りがちです。受け手のスキルセットを想定することが、システムの難易度を決める鍵となります。

「引き継ぎなきシステム化」が招く3つの罠

もし上記のチェックリストに「はい」と答えられないまま進むと、プロジェクトの目的はいつの間にか
「工数削減」へとすり替わり以下の3つの罠に陥ります。

罠①:今の仕事をそのままシステムで再現しようとする

「複雑な業務をすべて再現しないと意味がない」と作り込んだ結果、例外処理が肥大化。「そのシステムを使いこなせるのが特定の人だけ」という、デジタル版の属人化が生まれます。

罠②:工数削減だけが成果指標になる

「削減時間」ばかりに注目が集まると、入力や管理の手間が増えた現場は「結局、楽になっていない」と冷ややかになります。本来の目的は「誰でも回せる組織作り」だったはずです。

罠③:現場の協力が得られなくなる

ベテランのノウハウが言語化されないまま「システム化」だけが進むと、現場は「自分たちの価値を否定された」と感じ、本質的な改善に踏み込めなくなります。


「本当の属人化解消」を実現する現実的なアプローチ

では、どうすれば「やっているつもり」を脱却できるのでしょうか。

    • 「全部」を引き継がなくてもいい 「すべての業務を誰でもできるようにする」のは理想ですが、ハードルが高すぎます。一部の判断、一部の調整、一部の作業。「これなら渡せる」というピースを切り出すことが、現場にとっての大きな前進になります。
    • 「引き継げたこと」自体を成果とする 指標にすべきは「何分減ったか」ではなく、「一人で抱えていた業務を、複数人で回せるようになったか」「休める、相談できる状態が生まれたか」です。

 

事例:生産計画業務のデジタル化による「属人化の解消」と「役割分担の最適化」

【現状の課題:Before】

これまで、生産計画業務のすべてが特定の「ベテランスタッフ」一人に依存していました。

  • 属人化のリスク: 膨大な知識と経験が必要なため、他のスタッフでは代替が不可能。
  • 業務負荷の集中: 計画立案から微調整、確定までを一人で行うため、担当者の負担が極めて重く、業務がブラックボックス化していました。

【改善後の姿:After】

システム(最適ワークス)を導入することで、業務工程を「自動計算」「微調整」「最終確認」の3段階に分解し、チーム全体で分担できる体制を構築しました。

  1. システムによる自動化(最適ワークス)
    • まずは「最適ワークス」を活用し、複雑な条件を考慮したベースとなる生産計画を自動で生成します。
  2. 若手スタッフへの業務委譲
    • システムが作成した計画をベースに、若手スタッフが現場の状況に合わせた微調整を行います。これにより、高度な判断を要する前段階の業務を若手でも担えるようになります。
  3. ベテランは「最終判断」に特化
    • ベテランスタッフは、上がってきた計画の最終チェックと確定作業のみに集中。これまでの膨大な実務から解放され、より付加価値の高い調整業務に専念できます。

この事例のポイント

この取り組みの鍵は、単なる自動化ではなく、「システム+若手+ベテラン」の協調体制を作ったことにあります。
これにより、ベテランの負担を大幅に削減しつつ、若手の育成と業務の標準化を同時に実現しました。

 


生産計画こそ「小さく、確実に」始める

この上記の例のように、最初から「ベテランの経験を100%システムに置き換える」必要はありません。

特に工場の生産計画は、急な変更も多い仕事です。いきなり満点を目指すと、仕組みが重くなりすぎて失敗します。
まずは「この工程の予定作りだけを、他の人も触れるようにする」といった、小さく確実な一歩から始めることが大切です。

 

最後に:あなたの会社は、本当に前に進んでいますか?

「属人化解消に取り組んでいる状態」と「実際に業務が引き継がれている状態」は、同じではありません。

もし、引き継ぐ相手が決まらず、現場の負担も変わっていないのであれば、それは「属人化解消をやっているつもり」になっているだけかもしれません。

私たちスカイディスクでは、いきなりシステムの話をする前に、「誰の、どの業務を、誰に、どこまで渡すのか」という前提整理から伴走します。

「なんちゃって属人化解消」ではなく、本当に業務が渡る組織作りへ。 もし少しでも「自社のことかもしれない」と感じる部分があれば、一度立ち止まって、私たちと一緒に「業務の渡し方」から考えてみませんか。

属人化解消について、相談したい方は以下の「とりあえず相談する」よりお申し込みくださいませ。
一緒に属人化解消に向けて一歩踏み出してみましょう。

 

 

           

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