- コラム
パン製造における生地発酵条件の最適化!
パン製造について
加工食品の市場規模
2012年以降、国内の加工食品市場は堅調な拡大を見せており、現在は22.5兆円を超えています。中でも調理済品が市場を牽引しており、その背景には、家庭の食卓における簡便化ニーズの高まりがあると思われます。パンは、朝食から夕食まで親しまれる製品として市場の伸びと共に堅調に市場が拡大していくと予測されています。
パンの製造プロセスと課題
パンの製造プロセスは以下の6つのステップに分かれています。
- 生地の準備
- 成形
- 冷却
- 輸送
- 発酵
- 焼成
パンのサプライチェーンは大手による独占が進行しており、主要な製造プロセスには「中央工場から各地に生地が届けられるステップ」があります(4.輸送)。 このため、その先の発酵ステップ以降を実行する現場の数が多くなります。現場の数が多いということは、完成品のクオリティーを担保するために、条件の均一化に気を配る必要があるということを意味します。
これは食品の加工現場に限った話ではありませんが、多くの顧客は「店舗」による差分を考慮しません。一つのブランドの名の下に提供される製品のクオリティーは、いつも同じレベルであることが要求されます。
この記事では、昨今発展している人工知能(AI)によってパン製造の条件を最適化する試みを深堀りしてみます。人間の経験や勘に依存する完成品の違いを無くすことができれば、顧客の要求をさらに満たすことができるでしょう。
パン製造の条件最適化に関する海外の事業会社例
Zimplistic Pte
インドの発明家による自動調理ロボット「rotimatic」が、Zimplistic Pte社から販売されています(パンはインド人10億人の主食です)。この自動調理ロボットは機械学習技術を使用してパンを作ることで有名です。彼らの主張によると、rotimaticは「人工知能によって、使用するたびにパン作りが進化する」機械です。一方、高度な調理ロボットのデメリットかもしれませんが、「時間がかかる」というレビューも散見されています。それでも消費者は熱狂しています。Facebookでは、“rotimatic owners”というミュニティが設営され、コミュニティ内の消費者たちはこのロボットの上手な使い方をさかんに議論しています。
パン製造における生地発酵条件の最適化を行うAI技術の研究
パンの歴史を辿ると、日本で流行する前はヨーロッパで調理法が発展したようです。そのせいか、機械学習のパン作りへの応用研究を行っていたのも、ドイツ人でした。
ここでは、ブレーメン大学生産工学部のLino Antoni Gieferら研究者による研究例を紹介します。彼らの発表によれば、光学センサーから得られるデータを機械学習によって分析することで、パン生地の発酵の進行状態を監視することができるといいます。
この研究では、光学センサーの構築も肝要で、上記のようなシステムとモジュールが独自に作られました。機械学習の活用に必要なデータを取得するにはセンサーが必須ですが、特殊な環境であれば自作することもあります。
取得されたデータを用いてモデルを作る際には、アーキテクチャという概念が必要になります。特に「パン生地の発酵状態の最適化」などの実用性の高い具体的なプロジェクトの場合は、単一のアルゴリズムで完結するわけではありません。上の図のように、複数のアルゴリズムと処理を組み合わせて目的の達成を目指します。
上の画像は、光学センサーで得られた断片的情報を元に機械学習モデルがアウトプットしたコンピュータ画像です。発酵中の生地片の体積を監視できることが示されました。この監視システムが他の機械システムと連携されれば、良い頃合いの発酵状態でパンの加工を終了することができます。
加工の条件は複雑なので人間の職人技に依存することも多いですが、このようにわずかな情報をもとに精度よく必要な情報を取得することができれば、人間の手を離れてもクオリティーの高い完成品を作り出すことができるでしょう。
参照論文:Lino Antoni Giefer, Michael Lütjen, Ann-Kathrin Rohde and Michael Freitag, “Determination of the Optimal State of Dough Fermentation in Bread Production by Using Optical Sensors and Deep Learning”, Appl. Sci. 2019, 9 (20), 4266; DOI
まとめ
この記事ではパン製造についての概要と、パン製造に役立つ機械学習活用を「企業事例」「研究事例」の2つの視点でご紹介しました。
企業事例では、家庭用調理ロボットに機械学習を取り入れているという内容を紹介しました。個人がそのロボットを所有し使用し続けると、ロボットが「個人に最適化」した調理条件を学習していきます。
研究事例では、大衆向けのベーカリー現場が、生地の発酵条件を「大衆向けに最適化」するための手法開発を紹介しました。
パンのような食品加工に限らず、製品の調達を「内製」するか「外注」に頼るかの分かれ道は至るところにあります。機械学習は、内製する場合は現場固有のパラメータを発見するために使用され、外注の場合は「標準化」にコミットします。どちらを目指すかで、機械学習の使用方法は変化します。
まずは現場で何が求められているのかを明確にすることが大切でしょう。
※この記事はAI論文紹介メディア「アイブン」様より、ご提供いただいています。
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