食の未来を見据えたリーディングカンパニーが挑む生産計画DX
- カルビー株式会社様
- 食品
- (会社規模:1000名以上)
製造現場が取り組む生産計画の属人化解消・人為ミス削減
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課題- 生産計画業務の属人化解消
- 生産計画のデジタル化により、上位システムと自動連携したい
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解決策- 小日程計画と中日程計画のそれぞれで最適ワークス導入に着手
- RPAを利用して最適ワークスと社内システムとを連携
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効果- 小日程計画について、ベテラン担当者で2時間かかる計画作成が2分程に短縮
- 誰でも同じ精度で計画作成が可能に(業務標準化・属人化解消)
- 上位システムとの連携により、マスターデータ入力の確認作業が不要に。人為的な計画ミスを防止する
株式会社カルビーは1949年の創立以来、数々の菓子・食品を製造し、「ポテトチップス」など多数のヒット商品を生み出してきました。2030年に向けた長期ビジョン「NEXT Calbee&Beyond」を掲げ、先進的かつ独自の取り組みとしてDXを進めています。そのひとつとして、最適ワークスを2022年1月より湖南工場(滋賀県)に導入しました。
最適ワークス導入検討の経緯、生産計画DXに期待する効果について、カルビーの西日本生産部門を統括する溝口様にお話を伺いました。

カルビー株式会社
カルビージャパンリージョン 西日本事業本部 ゼネラルマネジャー 溝口 誠氏
生産計画の属人化解消・標準化を目指す
———まずは、湖南工場の役割を教えてください
湖南工場は、西日本最大の生産力を持つ工場です。DXのモデル工場でもあり、湖南工場で成功した事例は、新設するせとうち広島工場や全国の他工場に展開していきます。
———最適ワークス導入前の課題は何ですか?
従来、湖南工場ではポテトチップスの生産計画作成は、特定の担当者がエクセルを使用して行っていました。業務に属人性があり、その担当者以外が作ると成果の良いものができない状況でした。まずは、誰でも同じ精度で計画作成できるよう、これを標準化するべくシステム導入を検討し始めました。
そもそも、生産計画のデジタル化に取り組んだ理由は、生産計画は工場マネジメントの要だと認識していたからです。
「製造の出来栄えは生産計画で決まる」と、かつて、自分が30代の頃、当時の上司である製造課長から教わりました。当時は腹落ちしませんでしたが、自分が同じ立場となり、わずかな計画の違いで結果が大きく変わること、金額面でも大きな効果を生むことを体験し、これが属人的であってはまずいと実感しました。
また、新工場設立にあたって、MES(製造実行システム)やSCADA(監視制御システム)といった他システムと連携するためには、生産計画もデジタル化する必要があると認識していました。
決め手は、システムの柔軟性と対応力
——— 最適ワークスを選んだ決め手はありますか?
まず主眼となるポテトチップスは、原材料であるジャガイモを揚げ、その後に様々な種類に分かれていくという生産工程です。あまり他の食品企業では類を見ない工程で、これに対応できるツールをずっと探していました。
導入前には、他社のパッケージ製品でもPoC(実証実験)にトライしています。しかし、カルビーの生産工程としては不要な機能がある一方で、不足している機能もありました。まだ成果が見えない中で、追加機能を改修するための高額な投資は難しい、という状況でした。
そんなとき、最適ワークスに出会いました。最適ワークスでは、まずは少額でトライし、それを一歩ずつ改善する進め方で、よりカルビーらしい生産計画に仕上げることができたと思います。
——— 導入にあたり、大変だったことは何ですか?
やはり、カルビーの特殊な生産形態に対応いただくのに苦労しました。最初は、最適ワークスでも実情とかけ離れた生産計画が出てきました。カルビーの生産工程では、前工程での稼働条件を変えずに、後工程がその生産量をのみこむ生産能力を保有しています。この共通認識を持つために、実際の工場に足を運んでもらい生産ラインを見ながら説明しました。
その1ヶ月後には、すでに7割の出来栄えで計画のアウトプットが出てきて驚きました。スカイディスクさんにとっても初めてのケースだったそうですが、そのロジックに対応してもらったことで解決できました(※1)。
——— 我々もサービス立ち上げ当初に要望をいただき、最適ワークスを進化させるきっかけになったと思います。
計画作成時間が2時間から2分程度に
最大の効果は、人為的な計画ミスの防止
——— では、導入効果を教えてください
導入前は、ベテラン担当者で2時間、その方以外では丸1日をかけて計画作成していました。これが2分程に短縮されました。ベテラン担当者が作成した計画と見比べても、精度に遜色なく一同感動しました。
加えて、最大の導入効果は、人為的な計画ミスを防止できることだと考えています。人が作成すると、やはり間違いが発生し得る。計画に間違いが起こると、生産実績や製品品質に影響が及び、お客様へもご迷惑をかける事態になってしまいます。こういった被害を防げることは、大きな成果かと思います。
カルビーでは、ポテトチップスだけでも毎週のように新しい商品が開発されます。その都度、マスターデータを更新する必要がありますが、人による間違いを防ぐため、以前は何度も繰り返し確認する作業がありました。現在は上位システムで設計された情報を、自動的に最適ワークスに入力する仕組みを作り上げ、そのまま計画に落とし込みます。システム化によりこの確認作業が不要になったことも、業務効率をアップする成果かと思います。
成功のカギは、現場主導でのDX
——— どんな体制で導入を進めましたか?
運用に至るまでの2か月程は、私自身はほとんど導入に携わっておらず、現場メンバーと課長が進めてくれました。現場から特に反発はなく、むしろ、自分事として捉えて主体的に取り組んでくれました。
導入にあたっては、カルビー社内のシステムと連携するために、単に最適ワークスを動かすだけではなく、RPA(※2)を利用しています。具体的には、社内システムから生産計画作成に必要なデータを最適ワークスに連携し、最適化した生産計画のデータを、また社内システムに戻すところまで、スイッチ一つで自動化しています。この部分は、現場主導で実現したDXの取り組みになります。
——— 現場主導でDXを進められたんですね。
はい。デジタルを上手く使いこなせると仕事が楽になること、それを現場が実践して体験できることが大切です。『自分たちでできる』と実感すると、さらに改善意欲が湧くと思います。そこに対しては同時に、上長の方々のデジタルへの理解が必要です。
仕事の内容や価値、目的、問題点を把握しているメンバー自身が、DXに取り組むことが重要だと、この4年ほどDX推進やプロジェクトを通じて実感しました。現場で働く方々がITの知識を持つと改善活動の可能性が広がる、これがすごく大切です。
——— 全社としてのDXへの取り組みも同様ですか?
そうですね。カルビーの価値を上げるためのDXには、やはり自社の特徴をよく理解していることが必須です。IT知識だけでは価値創造はできません。企業の価値を一番知っている我々従業員がITを知ることで、よりカルビーらしいDXを進められているのではないでしょうか。
——— 自分たちでITの知識を身につけていく、そのスタンスがDXを進める上で最も重要かもしれません。
全国工場への展開
今後の展開
——— 最適ワークス活用の見通しについて、教えてください
我々は生産計画について、2つのテーマに取り組んでいます。翌日の計画である小日程計画と、週次・月次の計画である中日程計画とです。
小日程については、工場のラインごとに設備の制約条件があるため、工場ごとに取り組む必要があります。
一方で、中日程については、製品の需給状況や在庫を考慮しながら、在庫の平準化に取り組んでいます。そこに関しては、全国工場での展開が可能なのではないかと、今後スカイディスクさんの力を借りつつ進めていく方針です。
——— ぜひ、よろしくお願いいたします。ありがとうございました

左から、スカイディスク担当 下、溝口さま、山下さま、代表 内村
ユーザーインタビュー動画、YouTube公開中!
※1 特殊・複雑な制約条件への対応は、適応プランによって変わります。ご要望はご相談ください。
※2 RPA(Robotic Process Automation)とは、PC端末で行っている事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術のこと。マウス操作やキーボード入力などの操作手順を記録し、それを高速で正確に実行することができます。
※3 生産計画DXとは、日々の製造活動のDXを推進し、生産計画を可視化し、実績との差異を把握することで生産業務の改善活動に取り組むことに加え、経営判断の指標、受注・投資活動や社員教育等の指標としても活用し、DXを通して会社全体の生産性を改善していく取り組みのことを指します。
企業情報

カルビー株式会社
代表者:代表取締役社長 兼 CEO 江原 信/ 設立:1949年4月30日/ 事業内容:菓子・食品の製造・販売/ 従業員数: (連)4,398名 (単)1,883名(2022年3月31日現在)