難航しがちな個別受注生産の企業で、生産スケジューラの導入が進んだ理由
- 印刷メーカー様
- 紙・パルプ
- (会社規模:100名以上500名未満)
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課題- 個別受注や短納期といった業界特性から、システム導入の難易度が高い
- 多品種生産のため、生産切り替えによる設備の非稼働時間が多く発生している
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解決策- システム導入のハードルを下げるため、設定する制約条件を必須のものに絞る
- 1日ごとの計画立案から、日を跨いだ計画立案に変更
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効果- 導入ハードルが高い現場において、生産スケジューラが運用可能に
- 日を跨ぐ計画の最適化により、設備稼働率を向上
- 暗黙知となっていた生産工程の情報が可視化
背景と経緯
印刷メーカーでは、個別受注の注文を、1週間程度の短納期で請け負うことが多いです。ある印刷メーカーでは、短納期で直前の注文も多いことから、現場担当者が、当日の朝に作業計画を立てる形で進行していました。しかし、「人の頭で考える限界がある」「担当者にノウハウが属人化していて、業務フローが不明瞭」といった課題感を抱いたことで、生産計画業務へのツール導入の検討がスタートしました。
他社ツールの導入を検討した際には、約2,000万円という費用感を提示されて挫折。初期設定や利用が複雑とも感じており、導入の難航も予想されました。
引き続き課題感を抱えていた折に、最適ワークスのオンラインセミナーに参加。導入しやすそうで、費用も抑えられることから、最適ワークスの導入を決めました。
マスター設定は普段行っているものに絞る
印刷メーカーのような個別受注生産企業では、生産スケジューラの導入は難しくなります。なぜなら、生産スケジューラの導入を進める上で、肝となるのがマスターデータ(※1)の設定だからです。個別受注・多品種生産では、製品ごとに制約条件も多くなり、マスターデータ設定の手間が課題になります。今回のケースでも、既存のマスターデータもなかったことから、特にこの点がハードルになると予想されました。実際、印刷現場には、設備へのオーダーの割付け方法が色だけで何万パターンと存在しました。
一方で、現場担当者は当日に作業を計画する中で、これらのパターンを毎回すべて考慮している訳ではありません。
そこで、マスター設定では、何万通りと存在する色のパターンのうち、普段から考慮している約20パターンに絞って設定することに。また、その条件に当てはまらないものは、最適ワークスの「手直しモード」で修正を行い、中でも発生頻度の高いものは、マスターデータに追加してくことにしました。

手直しモードは直感的なドラッグ&ドロップ操作で計画を手直しできる
※1 マスターデータとは、生産計画を立案する上で、あらかじめ登録しておく情報(製品、工程、設備、スタッフ情報など)のことです。マスター設定・更新には、深い業務知識とシステム理解の両方が必要であり、生産スケジューラ導入の際にハードルになることが多いです。
より長期間で計画を最適化し、設備稼働率を向上させる
今回の大きな導入目的は、設備稼働率の向上による生産効率化です。印刷業の企業は、生産にかかる費用が自社の競争力に直結するため、生産性向上が強く求められます。その一方で、短納期や多品種生産といった特性上、生産切り替えの回数が多く、設備の非稼働時間が発生しやすいといったジレンマが存在します。
設備稼働率を高水準で維持するには、同一製品や類似する製品の作業をできるだけ連続させることが必要です。
しかし、従来の計画手法では人間が考慮できる量の限界により、1日ごとに計画立案していました。「当日に作業計画を決めるため、1日ごとでしか連続性を考慮できないこと」「特急オーダーが入った際は、さらに生産切り替えが発生すること」がボトルネックとなっていました。
最適ワークスの導入後は、人間よりもまとまった量を計画できるため、前後の日程も考慮した計画立案が可能になります。また、数分程度で計画立案が完了するため、特急オーダーが入った際にも、都度計画の再立案が可能となります。
こうしたボトルネックの解消により、生産切り替えの回数を抑え、設備稼働率の高い生産計画が出力できるようになりました。

日を跨いだ計画の最適化で、生産切り替えの回数を削減
導入効果は計画業務以外にも波及
ほかにも、最適ワークス導入の波及効果として、経営判断への好影響があります。
従来では、生産計画はじめ、生産現場の状況やノウハウは属人化しており、経営層が生産効率化の施策を検討したくても、現場の実態を把握するのが困難でした。
しかし、マスターデータ設定をする過程において、現場の業務フローや設備の稼働状況、各工程にかかる日数など、生産工程のかなりの暗黙知が言語化されました。現場の現状が可視化されたことで、設備投資や人員配置において、これまでより的確な経営判断をすることが可能になりました。
結果まとめ
- システム導入が難しい背景がある現場で、制約条件の数を絞ったマスター設定と「手直しモード」の活用により、生産スケジューラが運用可能に。
- これまでよりも長い期間で計画を最適化できるようになったことで、生産切り替えのタイミングが改善され、設備の稼働率を高められるように。
- これまで見えづらかった設備の稼働状況や各工程の生産状況が可視化され、より的確な経営判断が可能になった。